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雨上がりの公園で。

雨上がりの公園で。


朝から強風と雨で外は大荒れだ。
ここ数日はっきりとしない天候が続き、外に出れない息子はイライラしていた。

午前中のうちに雨を利用してベランダの大掃除。
風呂からバケツに水をくみあげること7回、、。
ドロドロの床を黙々と一人で磨き上げた。

雨にもマケズ、風にも、、、。

一区切りついてからベランダガーデニングのペンキ塗りをはじめた。
上空はヒュ〜ピュ〜ピ〜〜と唸りをあげている。
自作の木製棚やデッキ、飾り塀など、とにかくなんでも白く塗る。

『 ペェィニぃットゥ、ペェィニット、ペェィニぃットゥ。、、ペェィニット ゥホワ〜ィトゥ。』
 頭のどこか隅の方でミックの歌声が響いている。

木目にゆっくりしみ込んでいくペンキを見ていると、気持ちが徐々に落ち着いていくから不思議だ。
塗っては、乾かし、乾かしては塗る。無になるまで修行のように繰り返した。

暫くすると辺りには、さっぱりとした白い空間が広がっている。いつのまにか雨は上がり、
ベランダのあちこちに、まだらに揺れる薄ぼんやりとした、光の玉がふわふわとあらわれていた。
振返り空を見上げると厚い雲を割るように隙間から光がしみ出している。
しゃがみ込んでいた背中を延ばしながら部屋の中の時計を探した。
まだ、正午をまわったばかりだ。
昼食後に息子と公園にいこう。そう約束をした。




1年半前に叔父が亡くなり、家の掃除に浦和まで車を走らせた。
その途中、リサイクルショップを見つけ何となく立ち寄った。

店内には雑然と棚が並んでいた。
中央にほど近い棚の最上段、シンプルな形の山吹色の三輪車が目に飛び込んできた。
手に取ってみると小さなバイキングの絵、北欧のものだった。
当時まだ歩きだしたばかりの息子にそれを買い持ち帰った。
その三輪車はその日から今まで、このベランダの隅においてあった。


『 三輪車を持って公園にいこう。』


買ってきた当初息子はまだこぐ事が難しそうだった。
『もっと踏んでみろ』『交互に』『踏む』と躍起になって言ってはみたが、
あどけないまなざしが父の興奮を一蹴した。

午後一に公園へ向う道すがら、ずいぶんと大きくなった息子が三輪車に股がっている。
とてもバランスが悪い。この時期の成長は本当に早い、、、。
三輪車を放置しなければよかった、、。
大きな体のせいでペダルを踏みにくそうだ。

言葉は以前と違って、私が説明していることを一生懸命に見つめ返し聞いているようだった。
私の要求は激しくなり、『右だ!』『踏むんだ!』『左だ!』『こぐんだ!』『よし!』を連呼。
ときどき『よくやった。』とおだててみるが、実際のところ父の望むようにはいってはいない。
予想外の歯痒さや苛立に驚き、私が大人になる修練とともに三輪車をこぐ練習は続いた。

息子は何度もこぎだした、そして少しずつ距離をのばしていった。
大きなケヤキが立並ぶ遊歩道で、少し先をいかり肩になって懸命にペダルをこぐ背中が見えている。



『 ぼく、ばんがったよ。』

『 ばんがるじゃない、頑張るだからな、、よし、三輪車はパパが持つから、ここからは機関車に
 なって公園までいこう!』

長い一直線の黄色い視覚障害者誘導ブロックのうえを線路に、手をしっかりと脇に構えて


『 シュッ、シュッ、、シュッーーポーー。』



雄叫びを上げ両腕を前後に動かしながら唐突に駆け出した。
まだ、そんなにスピードがあるわけではないのだが、
本人は大マジメに機関車になりきっている。


公園につくと日だまり広場のまん中に大きな水たまりができていた。
いつもそこに無いものを見た息子はとても興奮した。

ほっておくと必ず突入するはずだ。。

地面から石を拾い息子の頭をこえるように水たまりのまん中へ投げ込んでみた。
辺りを写し込んだ樹木がじわじわと揺れながら波紋を広げていく。

息子は不思議そうに中腰で上半身を斜めに延ばし覗き込んでいた。

水たまりに落ちないか、どうか、落ちてもいいけど、、。どうだろう?
父の心配をよそに意外と慎重な息子。水たまりには落ちなかった。

ちょっと、期待がはずれた。

今度は近くの石を拾い始め、不器用な投げ込みが始まった。
ほとんど前には飛ばないが、、ばんがっている。

拾う石が無くなると枝や草をほうり投げていた。すると急に振り返り。



『  パーパっ  グーじーちゃんの海だね。  』



去年の夏、里帰りでみんなと一緒に行った沙美の海のことを思い出している。


『グーじーちゃんは元気になったかな?』

『うん、、。ママとぼくが、ナナヒャっけー新幹線にのってシューシューって行ったから、
 元気、なった。』


午前中の強風を思わせる雲が、頭の遥か上の方にぽつぽつとまだ残っていた。
こんな空を旅先の離島でいつか見た覚えがある。
いつも人がいるはずの公園を今日は2人だけで歩いた。




桜 写真 幸田森
 
                       桜と太陽               写真©幸田森  





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