信じ、続けてゆく力
信じ、続けてゆく力
15の春、暫く緩い時間を過ごしていた。
受験からの解放、他中学の新しい顔に馴染んでいきつつ、ハルウララ。
まだ、オタクという言葉は存在していなかったが、
美術高校に入った私の目の前にはウロウロしていた。
中学時代から、ハードロック、ヘビーメタルにハマっているという友人。
街の中古レコードショップに自身の小さなコーナーを設け、
手書き解説メモを添付。いらなくなったレコードをサバいていた。
新譜LPが3000円、子供のポケッチ・マニーでは中々のお買い物。
音楽の趣味もさることながら、レコードのトレード迄行き着いていたとは、
びっくりだった。
街中に住んでいた彼を、流石、都会っ子は違うバイ。。と一目おいた。
好きなバンドの為には平日の授業もサボった。
外タレなど、大きなライブは熊本まで来てくれない。
九州の首都、福岡に行くしかなかったのだ。
大胆な行動力に感心しつつ夢中になっている、その姿は中毒患者のようにも見えた。
卒業後上京。撃沈。。美大浪人暗黒時代突入。
彼と同じ予備校に通ったが、進路は少しずつ別れて行った。
暗中模索、、無知蒙昧、、魑魅魍魎、、修羅朱酒酒。。
そんな頃、彼はバンドを組み高円寺のステージに上がった。
遠い、もやのかかった薄〜〜〜ぃ記憶、、私も見に行ったらしいのだが、
29年も前の話。
そして今日、店の名前は変わったっが、同じ場所で、
若手ドラマー以外は、変わらぬメンバーで復活した。
オリジナル6曲を無事演奏しきった。
ステージから降りて来た笑顔につたわる汗を見ると、。
本気だなと感心した。
ライブハウス独特の爆音では歌詞が聞き取りづらくも、言葉以上に体に響き渡り、
途中ちょっとだけ、チューニングが怪しくも現代音楽を取り入れたのかなと?
暫く差し出された難解な音符に眉間にしわの時間もあった。
そんな些細なことではなく、全体を通して渋く迫力あるステージだった。
何よりも、続けようと思い集える根性が存在感となり現れていた。
これは撮らねばとファインダーを覗き、シャッターを切っていると
耳鳴りと地下室の籠った匂いが一瞬、29年前と重なっているように思えた。
演奏が終わり、とりのバンドが登場。
既に客席にいた彼らに向かって呟くようにボーカルMC、、
『音楽の何かを信じているから、長く続けられて来たんでしょう?』
昨今、解を求める事が多い世の中で、信を問うとは見事。
客席まばらなこの場所に何かがあると思った。
何かがあるとは、占い師ではあるまいが、、。
インチキ占い師は直ぐに解を出す。
解に飢えた者は直ぐにインチキの餌食となる。
分からないことには、解を出す事は出来ない。
いつか分かるのか?いや分からないのか?
分からないまま追いかけ続ける。
解など要らないのだ。
福岡のコンサート見に行こうかな〜っと悩んでいた、
高校1年生の彼の笑顔を思い出す。
51−15=36 改めると怖いような数字だ。。
36年も昔から変わらず信じ、続けてゆく力に
金足農業ばりにのけぞり全力で脱帽。
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