『役作り』
『役作り』
今年も『あっ』という間だ。
フリーランサーの夫婦が年を越す為に最後の戦いを行っている。
振り返えると今年も色々あった。
暇を迎えたとき、
それは全く動かない鏡面のような大海原にポツンと浮いている無音の世界。。
隣を見るとかみさんと子供も一緒に浮いてる。
ギタギタの太陽を真上から浴びながら、どこにも逃げ場が無い。
そんなとき夫婦は手と手をとって下唇を噛み締め、互いを見つめ合い、
子供を守り生き抜くことだけに神経を集中して、死ぬ気で祝詞を上げるのだ。
『風よふけ〜、めざめよ〜嵐!波よ〜どうか私達を〜どこでもいいから陸まで届けておくれ〜』
危機的な状態は反比例して夫婦の関係は良くなっていく。
協力しあうことしか選択肢がなくなってゆくからだ。
喧嘩をするほどの余力は残っていない。
忙しいときもそうだ、、
次から次に弾薬を詰めては撃ち、詰めては撃ち続ける。
明けない夜は無い。終わらない、仕事はないのだ。
休まずにハイになっていく。
大変ありがたいことだが師走がそうだ。
そんな忙しい時間にちょっとした間が、、。
晩酌をしながらテレビを見ていた。
前からちょっと気になっていた女優だ、、。
妊娠検査薬を手に持ちわらわらしている。
自分『 あれ、この女優さん、、ちょっと太ったよね。』
妻君『 役作りよ、、、。役作り。この人だったら、、そうよ、、。』
自分『 そうか、、、、、』
なるほど、妊娠している妻の役だからな〜。。
この女優さんなら、やるなきっと、、うん、うん、
おっと、、、俺の隣のこの人はどうなってんだ〜〜あ〜ん?
ニヤニヤしながら、、、。
自分『 ところで、、君のそれは何の役作り?』
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妻君『 ダメな亭主を持って死ぬほど苦労している妻の役よ。。』
目が本気だ。やばい、地雷踏んだ! 逃げ・・・ぅ
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